「真壁と大壁って何が違うの?」
「和室と洋室で壁が違うのはなんで?」
こちらの記事はそんな方に向けて書いています。
一口に壁と言っても、実は建物によってかなり仕様が異なります。
壁のことが分かるようになると、建物を見るのが10倍くらい楽しくなります。
今回は、日本の壁と海外の壁を、
私が今まで行った建築物を例に出しながら比べてみます。
※ここでの海外とは私が実際に住んでいたカナダとアメリカです。
海外や洋室で見られる大壁
海外の家や日本の洋室で見られる構造が大壁です。
大壁とは壁一面を真っ平な1つの面にするもので、
柱や断熱材などを壁の後ろに配置します。
この家は右側が大壁です。
天井の梁はあるものの、柱は全く見えません。
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こちらの家も大壁ですね。
全く関係ないですけど、アーチ型のゲートがかわいい。
![](https://diy-renovation.net/wp-content/uploads/2020/03/7W6A0495-1-1024x683.jpg)
家具配置の自由度が高いのも大壁のメリットです。
こちらは住宅ではありませんが、カナダの首都オタワにある国立美術館です。
これも巨大な大壁です。
![](https://diy-renovation.net/wp-content/uploads/2020/03/7W6A9946-1-1024x683.jpg)
それにしても、この色づかいとスケールは素敵です。
カナダの国旗みたい。
そして、上記の建物全ての壁がペンキ塗りです。
私はカナダに7年半いましたが、日本にあるようなクロスは
1回も見たことがありません。
というわけで、大壁でペンキ塗りというのが北アメリカ流の壁ですね。
以前に紹介したこちらの家もやっぱり大壁でペンキ塗りです。
和室に見られる真壁
真壁とは日本の和室に見られる柱と柱の間に壁がある構造です。
馴染みのある方も多いはずです。
こちらは岐阜県高山市にある高山陣屋。
江戸幕府の藩庁として使われていた建物です。
綺麗に柱が見えて、中は漆喰。まさに真壁です。
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こちらは歴史ある酒造です。
私の家なんかは柱が100mm幅ですけど、
ここのように立派な建物の柱は150mmくらいあります。
![](https://diy-renovation.net/wp-content/uploads/2020/03/7W6A3216-1024x683.jpg)
まさに真壁は柱を魅せる構造ですね。
こちらは以前に泊まった客室です。
小さいながらも柱と柱の間に壁がある構造は同じです。
![](https://diy-renovation.net/wp-content/uploads/2020/03/7W6A3372-1024x683.jpg)
壁の仕上げについては砂壁、珪藻土、漆喰、クロスなどがメインで
ペンキ塗りはあまり見かけません。
壁1つ見ても北米流とは全然違って面白いですよね。
欧州や他の地域は分かりませんが、少なくとも北米に真壁はありません。
和室にある真壁の由来
日本の古代の家は、地面を少し掘ったところに
山から切り出した木で柱を立てて作られていました。
ちなみにこれが「掘っ立て小屋」の言葉の由来です。
ただ、柱だけでは寒いので、
人々は柱と柱の間に竹や土で壁を作ることで雨風を防ぎました。
当時は今のように平らで大きなベニヤ板などがなかったので、
そうするしか壁を作る方法がありませんでした。
そのうち、この柱と柱の間に壁を作る真壁が、
日本伝統の構造ということで定着し、現在に至ります。
ただ、真壁には大工と左官職人の高い技術が必要で、品質が安定せず、
高コストで長納期という欠点がありました。
ところが近年になって、柱が工場にて高い精度でプレカットされ、
大きなベニヤや石膏ボードが大量生産されるようになると、状況は変わり始めます。
大壁は昔ながらの高い職人技術がなくても、短期間で安く作ることが可能です。
この条件はローコスト&短納期を追求する住宅メーカーにも歓迎され、
大壁は一気に普及しました。
この流れに押され、今では真壁は少なくなってきています。
モダン和室ということで、大壁の和室で琉球畳というのも出てきています。
時代の流れとはいえ、ちょっと悲しいですね。
大壁と真壁のメリット・デメリット
現役の大工さんに話を聞いてみたり、自分で調べたりした上で分かった
大壁と真壁のメリット・デメリットを紹介します。
私の考えですが、DIY等では参考になると思います。
大壁のメリット・デメリット
- 施工が簡単で工期を短縮できる
- 塗装がしやすい
- モダンでスタイリッシュな雰囲気
- 家具配置のプランニングがしやすい
- 部屋に湿気がこもりやすい
- 柱が湿気りやすく、カビや白蟻の確認ができなくなる
真壁のメリット・デメリット
- 施工が難しく手間がかかる
- 塗装がしにくい。柱全てに養生が必要で、それぞれの壁面を塗る必要がある
- 和風の雰囲気
- 仕上げに使われる漆喰や砂壁には調湿効果がある
- 柱の状態が常に確認できる
どちらも一長一短なので、各々の好みに合わせて使い分けると良いです。
私が真壁を維持する理由
リノベーション中の我が家はばっちり真壁です。
![](https://diy-renovation.net/wp-content/uploads/2020/03/IMG_0688-1-1024x744.jpeg)
最初は、真壁の上から断熱材を入れ、
上から板を貼って大壁にすることも考えました。
私は海外の家が好きなので、あのスタイリッシュで
スッキリとした雰囲気にしたい気持ちがありました。
しかし、40年以上前の職人さんの技を
私みたいな素人の趣味で隠してしまうのは勿体ない。
真壁には和風ならではの良さがあるので、
それを活かすべく真壁を維持することにしました。
さて、この我が家の壁も現在はとってもクールに仕上がりました。
![](https://diy-renovation.net/wp-content/uploads/2020/05/7W6A4038-1024x683.jpg)
壁は白の漆喰仕上げにしました。
詳しくはこちらの記事に。
照明の設置についてはこちらの記事にまとめました。
ちゃんちゃん
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