【比較】海外の大壁 VS 日本の真壁

「真壁と大壁って何が違うの?」

「和室と洋室で壁が違うのはなんで?」

こちらの記事はそんな方に向けて書いています。

一口に壁と言っても、実は建物によってかなり仕様が異なります。

壁のことが分かるようになると、建物を見るのが10倍くらい楽しくなります。

今回は、日本の壁と海外の壁を、
私が今まで行った建築物を例に出しながら比べてみます。

※ここでの海外とは私が実際に住んでいたカナダとアメリカです。

海外や洋室で見られる大壁

海外の家や日本の洋室で見られる構造が大壁です。

大壁とは壁一面を真っ平な1つの面にするもので、
柱や断熱材などを壁の後ろに配置します。

この家は右側が大壁です。
天井の梁はあるものの、柱は全く見えません。

こちらの家も大壁ですね。
全く関係ないですけど、アーチ型のゲートがかわいい。

家具配置の自由度が高いのも大壁のメリットです。

こちらは住宅ではありませんが、カナダの首都オタワにある国立美術館です。
これも巨大な大壁です。

それにしても、この色づかいとスケールは素敵です。
カナダの国旗みたい。

そして、上記の建物全ての壁がペンキ塗りです。

私はカナダに7年半いましたが、日本にあるようなクロスは
1回も見たことがありません。

というわけで、大壁でペンキ塗りというのが北アメリカ流の壁ですね。

以前に紹介したこちらの家もやっぱり大壁でペンキ塗りです。

和室に見られる真壁

真壁しんかべとは日本の和室に見られる柱と柱の間に壁がある構造です。

馴染みのある方も多いはずです。

こちらは岐阜県高山市にある高山陣屋。

江戸幕府の藩庁として使われていた建物です。
綺麗に柱が見えて、中は漆喰。まさに真壁です。

こちらは歴史ある酒造です。

私の家なんかは柱が100mm幅ですけど、
ここのように立派な建物の柱は150mmくらいあります。

まさに真壁は柱を魅せる構造ですね。

こちらは以前に泊まった客室です。
小さいながらも柱と柱の間に壁がある構造は同じです。

壁の仕上げについては砂壁、珪藻土、漆喰、クロスなどがメインで
ペンキ塗りはあまり見かけません。

壁1つ見ても北米流とは全然違って面白いですよね。

欧州や他の地域は分かりませんが、少なくとも北米に真壁はありません。

和室にある真壁の由来

日本の古代の家は、地面を少し掘ったところに
山から切り出した木で柱を立てて作られていました。

ちなみにこれが「掘っ立て小屋」の言葉の由来です。

ただ、柱だけでは寒いので、
人々は柱と柱の間に竹や土で壁を作ることで雨風を防ぎました。

当時は今のように平らで大きなベニヤ板などがなかったので、
そうするしか壁を作る方法がありませんでした。

そのうち、この柱と柱の間に壁を作る真壁が、
日本伝統の構造ということで定着し、現在に至ります。

ただ、真壁には大工と左官職人の高い技術が必要で、品質が安定せず、
高コストで長納期という欠点がありました。

ところが近年になって、柱が工場にて高い精度でプレカットされ、
大きなベニヤや石膏ボードが大量生産されるようになると、状況は変わり始めます。

大壁は昔ながらの高い職人技術がなくても、短期間で安く作ることが可能です。

この条件はローコスト&短納期を追求する住宅メーカーにも歓迎され、
大壁は一気に普及しました。

この流れに押され、今では真壁は少なくなってきています。
モダン和室ということで、大壁の和室で琉球畳というのも出てきています。

時代の流れとはいえ、ちょっと悲しいですね。

大壁と真壁のメリット・デメリット

現役の大工さんに話を聞いてみたり、自分で調べたりした上で分かった
大壁と真壁のメリット・デメリットを紹介します。

私の考えですが、DIY等では参考になると思います。

大壁のメリット・デメリット

  • 施工が簡単で工期を短縮できる
  • 塗装がしやすい
  • モダンでスタイリッシュな雰囲気
  • 家具配置のプランニングがしやすい
  • 部屋に湿気がこもりやすい
  • 柱が湿気りやすく、カビや白蟻の確認ができなくなる

真壁のメリット・デメリット

  • 施工が難しく手間がかかる
  • 塗装がしにくい。柱全てに養生が必要で、それぞれの壁面を塗る必要がある
  • 和風の雰囲気
  • 仕上げに使われる漆喰や砂壁には調湿効果がある
  • 柱の状態が常に確認できる

どちらも一長一短なので、各々の好みに合わせて使い分けると良いです。

私が真壁を維持する理由

リノベーション中の我が家はばっちり真壁です。

最初は、真壁の上から断熱材を入れ、
上から板を貼って大壁にすることも考えました。

私は海外の家が好きなので、あのスタイリッシュで
スッキリとした雰囲気にしたい気持ちがありました。

しかし、40年以上前の職人さんの技を
私みたいな素人の趣味で隠してしまうのは勿体ない。

真壁には和風ならではの良さがあるので、
それを活かすべく真壁を維持することにしました。

さて、この我が家の壁も現在はとってもクールに仕上がりました。

壁は白の漆喰仕上げにしました。
詳しくはこちらの記事に。

照明の設置についてはこちらの記事にまとめました。

ちゃんちゃん

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